「高校授業料実質無償化制度」で私立高でも費用負担0円!?
東京46万・大阪60万の支援を受けるには!?

2020.10.28

授業料が安いから公立高校に進学してほしい。そう考えている親御さんは多いかもしれません。しかしお子さんの中には、やりたいこと・学びたいことがあって本当は私立に進学したくて悩んでいる人もいるでしょう。

実は高校授業料実質無償化の制度が平成22年から始まり、親御さんの心配もいらない可能性があります。どういった家庭なら制度を利用できるのか、利用方法などと合わせて紹介します。

高校の授業料はいくらか?学習費は私立が公立のおよそ2.5倍

高校の授業料がいくらぐらいか、上のお子さんがいない親御さんはご存知ないかもしれません。都道府県・学校によって違いがありますが、文部科学省が発表している公立・私立高校の授業料にまつわる情報をまとめてみましょう。

公立高校(全日制)

年間25,378円(学習費総額280,487円/全体の9%)
※「平成30年度子供の学習費調査の結果について」(文部科学省/令和元年12月18日発表)

私立高校(全日制)

年間230,026円(学習費総額719,051円/全体の32%)
※「平成30年度子供の学習費調査の結果について」(文部科学省/令和元年12月18日発表)
年間404,713円(合計736,677円)
※「令和元年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」(文部科学省/令和元年12月25日発表)

私立の授業料は調査方法が異なるため差がありますが、合計金額が概ね70万円強であると捉えても良いでしょう。その金額で公立高校の金額(学習費総額)と比較するとおよそ2.5倍の学習費がかかるといえます。

高校授業料無償化とはどのような制度か

高校授業料実質無償化の制度が始まったのは平成22年からです。平成26年の名称変更・内容一部改正を経て、令和2年現在では「高等学校等就学支援金」と「高校生等奨学給付金」の2つをメインとして国が支援を行っています。令和2年4月に私立高校在学者を抱える家庭への支援額が変更になり、詳しい制度の内容を知りたい方も多いのではないでしょうか。

高等学校等就学支援金

授業料に相当する額の支援金を支給することで、教育にかかる経済的負担を軽減するのを目的とした制度が高等学校等就学支援金です。申請して条件を満たせば支給され、返済の義務はありません。

【要件】
下の3つの要件を満たす生徒は支援を受けられます。
●在学要件:国公私立を問わず高等学校・特別支援学校(高等部)・高等専門学校(1〜3年生)などに通っていて、在学期間が通算で36月未満。
●在住要件:日本国内に住所がある。 ※文部科学大臣認定の在外教育施設高等部に在籍している人には別の支援がある。
●所得要件:保護者等の課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除額で計算される「算定基準額」が30万4,200円未満(令和2年7月支給分以降)。「モデル世帯」(両親2人と高校生・中学生の子どもが2人の計4人家族で、親の片方が働いている場合の目安)のうち、年収約910万円未満の世帯と紹介されている場合もある。

【支給金額】
限度額は下の通りです。これより授業料が安い場合は、その授業料の金額を上限として支給されます。

国立高等学校・国立中等教育学校の後期課程:月額9,600円
公立高等学校(定時制)、公立中等教育学校の後期課程(定時制):月額2,700円
公立高等学校(通信制)、公立中等教育学校の後期課程(通信制):月額520円
国立・公立特別支援学校の高等部:月額400円
上記以外の支給対象高等学校等:月額9,900円
※単位制の学校:一単位あたり4,812円(これを履修期間で除した額が支給月額)

また私立の学校などに通っている場合は、家庭の収入に応じて月額9,900円から加算支給が行われます。子どもの数や親御さんの就労状況によって変わるため、HPなどを参考に計算してみましょう。

【手続き方法】
1年生の4月、入学時に学校を通じて申請します。学校から配布される「受給資格認定申請書」と合わせて、マイナンバーカードの写しを提出しましょう。マイナンバーの写しが提出できない場合は、通知カードの写しやマイナンバーが記載された住民票・住民票記載事項証明書など、もしくは市町村民税所得割額が確認できる書類(市町村民税税額決定通知・納税通知書・課税証明書など)を提出することになります。

高校生等奨学給付金

高等学校等就学支援金は“授業料”の分の経済的負担を軽減する目的でしたが、高校生等奨学給付金は教科書費や教科外活動費などの負担を一部補助するための制度です。もちろん高等学校等就学支援金と併用できます。

【対象者・支給金額】
支給の対象と金額は以下の通りです(金額はすべて年額)。

●生活保護受給世帯【全日制等・通信制】
国立・公立高等学校等の在学生:3万2,300円
私立高等学校等の在学生:5万2,600円
●非課税世帯【全日制等】(第1子)
国立・公立高等学校等の在学生:8万4,000円
私立高等学校等の在学生:10万3,500円
●非課税世帯【全日制等】(第2子以降)
国立・公立高等学校等の在学生:12万9,700円
私立高等学校等の在学生:13万8,000円
●非課税世帯【通信制・専攻科】
国立・公立高等学校等の在学生:3万6,500円
私立高等学校等の在学生:3万8,100円

【手続き方法】
各都道府県・学校ごと・対象者の世帯状況によって手続きが異なります。たとえば東京都の国公立(高等専門学校以外)の場合は、「東京都国公立高等学校等奨学のための給付金受給申請書」と「支払金口座振替依頼書」と「通帳の写し」を申請者全員が用意する必要があります(学校徴収金への充当を承諾する場合は「充当委任状」も)。そこから生活保護受給世帯であれば生業扶助受給証明書が、非課税世帯であればマイナンバー収集台紙などの書類が申請者ごとで追加される仕組みです。詳しくは下のリンクから、お住まいの地域の情報を確認してください。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/detail/1353842.htm

各自治体の高校生の授業料支援制度

国が設けている制度以外にも、自治体によっては独自の支援制度を設けているところもあります。東京都と大阪府の制度を今回は紹介します。自治体によっては高等学校等就学支援金制度との併用ができない場合もあるため、各々で確認しましょう。

東京都

国の支援金制度とは別に、「授業上軽減助成金」で私立高校在校生の保護者支援を東京都は行っています(ほかにも生活保護受給世帯などを対象とした「私立高等学校等奨学給付金」や無利子で借りられる「育英資金」もあります)。

▼要件:下の5つに当てはまる保護者等。
①令和2年5月1日以前から申請時まで引き続き、保護者と生徒が都内に在住している。
②私立の高等学校・専修学校(高等課程)・高等専門学校(1〜3年生)など在学中の生徒の保護者。
③年収目安が約910万円まで(算定基準額が304,200円未満)のモデル世帯。
▼支給額:モデル世帯で年額34万2,200円(在学校の授業料を上限に、就学支援金と合わせて、都内私立高校平均授業料に相当する46万1,000円まで)
※所得制限を超える場合でも、23歳未満の扶養家族が3人以上いる世帯には5万9,400円まで助成される特例あり

大阪府

大阪府の授業料支援制度は「私立高等学校等授業料支援補助金」と呼ばれています。
▼要件:下の5つに当てはまる生徒。
①国の就学支援金を受給している
②受給する年度の10月1日に保護者全員と生徒が大阪府内在住している
③受給する年度の10月1日に「就学支援推進校」に在籍している
④保護者全員の合算所得が基準額未満
▼支給額:モデル世帯で年額18万1,200円(就学支援金と合わせて、最大60万円[算定基準額800万円未満/子ども3人世帯など])

都道府県・収入ごとの細かい違いを家庭で調べてみよう

高校の授業料免除について基本情報をまとめましたが、申請する人がどこに住んでいるのか・どのくらい世帯収入があるのかなどによって受けられる支援がことなります。ぜひご家庭で調べて、親子で進路選択の際に参考にしてみてください。